■チョウ・キジェ監督の湘南彷彿のドイツのトータルフットボール
ドイツでは、現在「MSVデュイスブルク」の名で知られる「マイデリッヒャーSV」が、誕生したばかりのブンデスリーガ最初のシーズンで2位を占め、ドイツ中を驚かせた。後に日本サッカーリーグ時代の読売サッカークラブで指揮をとることになるルディ・グーテンドルフは、弱小クラブのひとつと見られていたマイデリッヒャーを率いることになり、超守備的な「リーゲル」と呼ばれるシステムを採用した。全員守備のサッカーである。
グーテンドルフは、相手がボールをもつと、ポジションに関係なく、全員が守備に下がるように求めた。ところが同時に、ボールを奪ったら、こんどは全員が攻撃に駆け上がることを要求したのである。チョウ・キジェ監督時代の湘南ベルマーレを彷彿させるチームである。前方を走る選手は後方から駆け上がる選手たちにスペースをつくる。そこに上がってくる選手は、ボールを奪ったときの状況により、MFの選手だったり、最終ラインの選手だったりした。
「マイデリッヒャーでは、FWの選手たちが守り、DFの選手たちが攻める」と、ある雑誌は書いた。ドイツ代表監督ヘルムート・シェーンは、「これぞ現代サッカー」と絶賛した。このような攻守で、マイデリッヒャーは1963/64シーズンのブンデスリーガで30戦して13勝13分け4敗、総得点60、総失点36という堂々たる成績を残した。優勝した1FCケルンには遠く及ばなかったが、ブンデスリーガ2位は、現在に至るまで、このクラブの最高順位である。