■日本代表は自らの力を信じ尽くして戦った
しかし遠藤と日本代表チームには、そんな気持ちはかけらもなかったようだ。ともかく、1回でも多く攻撃し、得点を奪って勝つ、そのために最初からボールを自分たちのものにする―。そんな気持ちが、遠藤の決定からは伝わってきた。そして試合は、過去数年間の日本代表で最もすばらしいものとなった。相手のボールを奪おうとする努力、献身、連係、奪ったボールを得点に結びつけようとする果敢さ、連係、そして決断。それは遠藤の「ボール選択」の瞬間から試合終了のホイッスルが吹かれるまで、途切れることなく続いた。
ただサウジアラビアに勝ったのではない。この日、日本代表は流れるような速攻から前半32分に南野拓実が南側ゴールに先制点を決め、後半4分には、チャンスと思う間もなく伊東純也が追加点を北側ゴールに突き刺して、「完璧」に近い(後半37分に浅野拓磨が3点目を決めていれば本当に「完璧」だった)試合運びで2-0の勝利をつかんだのだ。
何かを頼りにする気持ちを吹っ切り、日本代表が自らの力を信じ尽くして戦ったサウジアラビア戦の90分間。もしかしたら、埼スタの北側ゴールにかけられた「呪術」を解き放つものになったのかもしれない。