サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、大住良之の「超マニアックコラム」。今回は、科学で解明することはできないが、それだけに魅力的でもある「ミステリー」の話。
■「常識」にあてはまらない旧国立
スタジアムは、西側にメインスタンドをつくるのが常識とされている。通常、競技が行われるのは午後か夜。日没後は問題がないが、太陽が低くなる午後の時間は西日となり、東側のスタンドからは逆光になる。西側にベンチやVIP席などを置き、同時にテレビのメインカメラも配置して「順光」にするというのが、スタジアムの常識なのだ。
だが国立競技場は、現在も、そして旧競技場も、ピッチの中央ライン、サッカーでいえば両ゴールを結んだ線が正確に南北にはなっておらず、時計回りに25度も傾いている。そしてトヨタカップが行われる12月の東京では、太陽はメインスタンドの背後ではなく、南側のゴール裏スタンドに向かって落ちていく。しかも旧国立競技場は、この部分が、屋根のない観客席では最も低かったから、その西日は大きな問題だった。