12月の午後の試合では、北側のエンドをとったチームは「完全逆光」となり、GKの守備が難しくなる。そしてもちろん、攻撃に移るにも、逆光で状況を見にくいこともあって不利なはずなのだ。逆に言えば、南側から北側に向かって攻めるチームが圧倒的に有利というスタジアムだった。トヨタカップのキックオフ時間は南米およびヨーロッパへの試合中継時間を考えて正午と決められていたので、北側のエンドは常に不利な状況に置かれていた。
その結果として、北側のゴールへの得点が多いのなら納得がいく。しかし初期のトヨタカップを見ながら、得点が次々と「不利」なはずの南側のゴールにはいるのが、私は不思議でならなかった。日本で行う大会、1980年代のトヨタカップでは出場クラブのサポーターの来日もそう多くはなかったので、「サポーター要素」はあまりない。この不思議は、ついに解明されることがなかった。
■サウジアラビアを飲み込んだ遠藤の「気合」
さて、2月1日のサウジアラビア戦、コイントスに勝つと、日本代表キャプテンの遠藤航は気合のこもった表情で即座に「ボール」を求めた。私は北側のエンドを選ぶに違いないと思っていたので、非常に興味深く思った。サウジアラビアのキャプテン、アルドサリは、遠藤の気合に吸い込まれるように、「このまま」と、南側のエンドを示した。
ここまで無敗、7戦して6勝1分けのサウジアラビアは、このグループ最大の強敵だった。サウジアラビアに4勝ち点もの大差をつけられ、ワールドカップ7大会連続出場に向けて勝つしかない立場の日本は、どんなものでも、たとえ何の根拠もない「埼スタ北側ゴール伝説」でも、頼りたくなるのが人情というものではないか。