サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、大住良之の「超マニアックコラム」。今回は、科学で解明することはできないが、それだけに魅力的でもある「ミステリー」の話。
■世界一決定戦での不思議な事実
ところで、この「埼スタの北側ゴール」のような例は、他にはないのだろうか。私がただひとつ思い浮かぶのが、東京の旧国立競技場を舞台としたトヨタカップである。
1981年の2月に第1回大会が行われたトヨタカップ。欧州と南米のクラブチャンピオンが東京で1試合だけ戦って「世界チャンピオン」を決めるという大会だったが、日本代表が奮わなかった1980年代の日本のサッカーにとっては非常に大きなイベントだった。いわば日本のファンが1年にいちど、世界とつながる日が、トヨタカップだったのだ。そしてその初期には、メインスタンドから見て右側、すなわち「南側」のゴールにばかり得点がはいっていたという不思議な事実がある。