■老獪なゲームマネジメントも
しかし、パサーを務めるだけが酒井の攻撃能力ではない。27分、大迫がペナルティーエリア内でタテパスをもらい、切れ込んで左足のシュートを放ったシーンでは、酒井は大迫の大外を走り、大迫へのマークを緩めていた。
この日も鉄壁を誇る守備では、インターセプトを狙い、相手FWとは激しくデュエルしボール奪取をするシーンもあった酒井。しかし、特に前半は、彼の圧巻の攻撃能力、攻撃センスが垣間見れたと言えるだろう。惜しむらくは、前半24分のコーナーキックでのヘディングシュートが枠を外れたこと。酒井レベルの選手であれば、あのプレーはミスということになるのだろう。
そして前半45分、相手と競り合い、ボールがタッチラインを出た際、酒井はピッチに倒れ込んだ。相手選手のファウルだった。瞬間、示されたのはロスタイム1分の表示。右足を痛そうに触る酒井。接触があり、痛いことは間違いないだろうが、絶妙の間の取り方だった。試合再開まで約30秒があり、酒井が蹴ったボールは相手ゴールキーパーへ。そして、ゴールキーパーが前線へボールを蹴った瞬間に、前半終了の笛は吹かれたのだった。
後半追加点を挙げ、危なくなく勝利を収めた日本代表。巧みなポジショニングと圧巻のパス能力、いつも通りの手堅い守備と、老獪なゲームマネジメント。急造の中国代表の左サイドではどう考えても太刀打ちできない、ハイレベルなサイドバックが、日本の右サイドには君臨していた――。