サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、ゴール裏で座っている人たちの話。彼らが切り取る「芸術品」は、国境も時代をも超えていく。
■世界中に広がる「親子カメラマン」
サッカーの報道にかかわる人びとのなかには、ひとつの「定説」がある。
「カメラマンの息子はカメラマン。記者の息子は?」
この世界では、「親子でカメラマン」という例がたくさんある。選手でいえば、たとえば日本代表出場50試合以上という厳しい基準がある「日本サッカー殿堂」(個人ではいっているのは現時点でわずか82人)に、ただひとりカメラマンとして名を連ねているI氏(私の最も敬愛する友人である)も、ご子息が同じようにスポーツ、なかでもサッカーを中心とするカメラマンである。I氏のほかにも、「親子カメラマン」は数多くいる。
しかし悲しいことに、私や後藤健生さんといった「サッカー記者」たちの息子で、父親と同じ仕事に就いたという話を聞いたことがない。何時間も机にしがみついて原稿を書いている姿を子どもながらに見ていて、とても楽しそうな仕事には思えないのだろう。サッカー記者は「家業」にはなりえないのである。
「親子カメラマン」は、世界でも少なくない。2020年11月のこの連載「1枚の写真」のなかで紹介した英国の名カメラマン、ジョン・バーリーの息子アンドリューもサッカーのカメラマンとして活躍し、リーズ・ユナイテッドのオフィシャル・カメラマンになっていると聞いた。
だが、「親子カメラマンの世界チャンピオン」といえば、アルゼンチンのアルフィエリ親子以外にはない。親子そろって歴史に名を残す有名な写真を撮った。そしてあろうことか、息子にとどまらず孫まで、世界的に評価される有名なサッカーカメラマンになっているのである…。