■商社とマネジメントの共通点

 就職活動では、狙いを商社一本に絞った。スポーツの世界とは違う土俵で勝負したいと思ったが、行き先を示してくれたのはサッカーだった。

「大学サッカーやキャプテンをやった経験を通して自分という人間を見つめた時、チームを動かすという立ち位置が好きなんだと考えました。メーカーだったら自社製品が、金融機関なら証券など金融商品がメインになります。そう分析すると、商社は人がいないと成り立たない業界だと考えました。自分がメインになって、メーカーとその先をつなげて、付加価値をつけて提供する。そんな仕事に魅力を感じて、商社を受けていました」

 付加価値をつけながら、人と人の間に立つ。いま振り返ると、現在の仕事に就く予兆は、すでにあったのかもしれない。

 無事に商社から内定を得た2018年の年末、藤川さんと板倉は温泉へと旅行した。一緒に湯に浸かっていると、板倉が唐突な話を始めた。

「『もしかしたら、マンチェスター・シティに移籍するかもしれない』みたいなことを言うんですよね。3日くらい経ったら、『1週間後に、シティに行ってくるわ』って」

 年が明けて2019年1月、板倉はシティから期限付き移籍したフローニンゲンのユニフォームに袖を通した。その3か月後、藤川さんは真新しいスーツでネクタイを締めた。

 2人が新しいステージに立った。

(5)へ続く
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