■欧州選手権での武勇伝

 私の友人のジャーナリストT氏は、さまざまな記者会見での「武勇伝」で知られている。1990年代には当時ヴェルディ川﨑の監督をしていたエメルソン・レオンの痛いところを突き、「おまえは馬鹿だ」と逆ギレされてしまった。通訳がそのまま訳してくれたので、記者会見場はどっと沸いた。

 2004年にポルトガルで行われた欧州選手権では、彼はポルトガル代表監督のフェリペ・スコラリにいいように使われた。ポルトガルがスペインを1-0で下し、ようやくベスト8進出を決めたポルトガル。スコラリ監督の記者会見は延々と続き、試合終了から1時間半、午後11時を回っても終わりそうもない。会見室の前方の列にいたT氏も疲れ切ったのか、首を垂れ、こっくり、こっくりと始めた。

「日本人が寝てしまったから、もう終わりにしよう」

 T氏を指さしながら、スコラリ監督はそう大声で言って、席を立った。短期間ながらジュビロ磐田の監督を務めたことがあるスコラリ監督は、T氏の顔を見知っていたのだ。ポルトガルの記者たちもT氏を振り返り、笑った。周囲の騒ぎに驚いて目覚めたT氏は、何ごとかわからないまま周囲を見渡していた。

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