■待ち遠しい「人間同士のコミュニケーション」の復活

 クラブによっては、Zoomでの会見時に全員のビデオをオンにさせ、出席者の顔が見えるようにするが、最近では多くのクラブでそのときの質問者以外はビデオをオフにし、名前だけが表示されるようにしている。このような場合には、ラーメンをすすりながらでも、居眠りをしながらでも、記者会見を聞くことができる。私は、Wi-Fiの通信速度などテクニカルな問題さえなければ、全員が顔を出す形がいいと思っている。音声だけミュートにしておけば、じゃまにはならない。

 記者会見は、監督や選手など、サッカーの当事者と、取材記者たちが直接話をして試合についての理解を深めようという大事な場だ。そこには、言葉以外にも、表情や口調、手や体の動きなど、さまざまな情報が隠されている。人間同士のコミュニケーションとは、そうしたものを総合的にとらえることで成り立つものだ。そうしたものをいくつも欠くZoomでの記者会見を嫌って、一昨年来、Jリーグでは試合後の会見に出ていないベテランジャーナリストが何人もいる。

 早くコロナ禍が終息し、監督たちと目と目を見合って試合後の会話をやり合える日がくることを、「敗軍の将」たちの気高い態度に触れ、人生には勝利以上に価値のあるものがあるという事実を再認識させられることを、私は心待ちにしている。

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