■「国民のひとりあたり4ゴール」の計算
ところが、1992年9月5日に最初の公式戦である「ナビスコカップ」が始まったとき、Jリーグは入場者を1人の単位まで数え、実数を発表したのである。「本当の数字を出さなければ、どう成長していったのか、わからなくなる」という大英断だった。翌日の1試合を含め、この節に行われた5試合の総入場者数は3万6778人。1試合平均では7356人。最も少なかったガンバ大阪対横浜マリノス(神戸中央)は4728人だった。
翌年には「Jリーグブーム」でどのスタジアムも満員になり、Jリーグの入場券は「プラチナチケット」と呼ばれるようになるのだが、プロリーグがまだ海のものとも山のものともわからない1992年スタート時に5試合の平均が7356人であり、29年間のシーズンを経て、J3まで1節に最多で28もの試合が行われるなか、1試合平均で1万人を超えているのは、驚くべきことと言わなければならない。
これはただの数字ではない。Jリーグは、その歴史を通じて実に日本の全国民がひとり1.5試合を見たという入場者数を積み上げてきた。あくまでも計算上の話だが、日本国民のひとりあたり4ゴールを見たことになる。ゴールはサッカーの最大の喜びであり、ボールがネットに突き刺さった瞬間には、どんな人でも腰を浮かせ、目を輝かせる。Jリーグはその喜び、人生の貴重な瞬間を、日本国民に提供し続けてきたことになる。