■失敗していたロドリゲス監督の逃げ切り策

 浦和は、最終的には最後に投入された槙野のゴールで貴的な勝利を引き寄せる結果になった。

 そういえば、ルヴァンカップで浦和が川崎と引き分けて準決勝進出を果たした9月5日の試合でも、最後の同点ゴールを決めたのは槙野だった。

 埼玉スタジアムでのファーストレグを1対1の引き分けで終えていた浦和だったが、等々力でのセカンドレグでは、終盤に川崎に連続失点して1対3とリードされてしまう。そして、87分にユンカーがこぼれ球にうまく合わせて1点差に詰め寄ると、追加タイムの90+4分。左CKから生まれたゴール前の混戦の中でシュートを叩き込んだのが槙野だった。

「槙野がヒーローになった」という結果は、天皇杯決勝と同じである。

 だが、川崎との試合では、槙野は1点を追う場面で90+2分に“パワープレー要員”として投入されたわけだ。つまり、リカルド・ロドリゲス監督の意図通りに槙野が働いたのだ。

 ところが、天皇杯決勝で槙野が投入されたのは“守備固め”のためだったはずだ。

 だが、監督の意図した守備=逃げ切りは成功せず、槙野は再び攻撃面で脚光を浴びることになったのだ。

 もちろん、サッカーというのは意図通りに進むものではない。幸運と不運が交錯して予想外のことが次々と起こる。そうした刻々と状況が変化する中で、的確に判断して試合を進めていく。それが、“不確実性のスポーツ”であるサッカーという競技なのだ。

 土壇場で1点を奪われて追いつかれた中ですぐに気持ちを切り替えて攻撃面で結果を出した槙野は本当に素晴らしい選手だ。

 しかし、最終的に勝利を手繰り寄せることに成功したといっても、浦和のゲームの進め方はとても褒められたものではなかった。

(3)へ続く
  1. 1
  2. 2
  3. 3