■「誰もが幸せになれる試合」

 1対1の同点となってから、ゲームはまさにノーガードの撃ち合いの様相を呈した。横浜FMはサイドからツートップ目掛けて早いタイミングでボールを入れ、川崎は相手の守備ラインの裏に走り込む選手を使って、チャンスを作り合う。そして、ゲームはそのまま1対1の引き分けに終わったのである。

 まさに、ケヴィン・マスカット監督が言うように「誰もが幸せになれる試合」だった。両チームの選手たちにとっても、とくに得点王の座を分かち合ったレアンドロ・ダミアンと前田にとっても、そしてカードを切り合った両監督にとっても、さらに、これが最後のJリーグでのレフェリングとなった家本政明主審にとっても幸せな気分でシーズンを終えることができたことだろう。

 3万人を超える観衆も、見ごたえのある攻防に満足感を抱いたのではないだろうか。

 この日の日産スタジアムには3万人を超える観客が集まった(3万0657人)。

 新型コロナウイルス感染が広がった2020年2月末。開幕したばかりのJリーグが中断し、その後、無観客試合として再開され、観客が入れるようになってからも厳しい観客数の制限が続いた。「上限5000人」という状況も長く続いたが、2021年の秋になってようやく国内での感染はピークアウトして観客数の上限が引き揚げられてきた。

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