■パス・サッカーの追究が生んだ守備力

 前半の45分は、横浜FMが攻めて川崎が守るという展開が続いた。

 川崎がこれほど攻め込まれた試合というのはそうはなかったはずだ。この辺りは、攻撃力が売り物の横浜FMらしいところである。

 横浜FMがこれだけ攻め込めたのは、パスをつなぐことにこだわらず、自分たちの特徴であるスピードを生かしたためだ。

 川崎は、守備力も高い。J1リーグでの総失点数は28とリーグ最少を記録した。とくに、パスをつないでくる相手に対しての川崎の守備は強力だ。

 これは、自分たちがパス・サッカーを究めているからだろう。立ち位置をちょっとだけ変えることで小さなスペースを生み出し、そこに第2、第3の選手が入り込むことでパスがいくらでもつながる……。それが、川崎のサッカーの基本だ。

 だから、相手がボールを持っている時にも「危険なスペース」が見えるのだ。だから、すぐにそこをカバーできるのである。現在の川崎のサッカーの基礎を築いた風間八宏前監督は、守備のことを質問された時に「目が速くなる」という言い回しを使っていた。危険なスペースを見つけ出す目である。

 だから、相手がパス・サッカーにこだわってくれれば川崎は余裕を持って対処できるのだ。

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