11月3日、今季のJ1リーグ優勝チームが決定した。4試合を残して、川崎フロンターレが連覇を果たしたのだ。
早々とタイトル防衛を決め、シーズン途中には三笘薫と田中碧がヨーロッパへと羽ばたいた。だが、川崎の「波」はまだ途切れない。新たな可能性が、飛躍の予感を高めている。
旗手怜央、23歳。J1連覇の翌日、日本代表に初選出された。シーズンは終盤に入っているが、新たな物語の展開を予感させる。
■優勝に流した涙の意味
11月3日、晴天の等々力陸上競技場。浦和レッズとのリーグ第34節終了の瞬間、旗手怜央は地面に突っ伏した。その瞬間には自力優勝を決めたわけではなかったから、おそらく悔し涙だっただろう。勝てば2位の横浜F・マリノスの試合結果に左右されず、タイトルをもぎ取ることができるはずだった。先制しながら追いつかれ、勝ち切れなかったことへのふがいなさが涙となって流れ出たはずだ。
横浜FM敗退の一報により優勝が決まると、川崎の選手たちは抱擁を繰り返した。チームメイトたちと円陣を組むと、旗手は再び目を赤くした。円陣が解けてピッチ中に歓喜が広がっても、旗手の涙は止まらなかった。試合終了時とは違い、この時間の旗手の頭には難しいシーズンが思い起こされていたに違いない。