■ポジションに左右されない持ち味
ただし、どのポジションに入ろうと、旗手の持ち味は消えない。あくまでプレーはアグレッシブ。攻撃的なプレーが対面の相手を圧倒し、まさに「最大の防御」となっていた。実際に、今季ここまで挙げたリーグ戦での4ゴールのうち、半分以上がサイドバックとして先発した試合で決めたものだ。
旗手は今季、背番号を昨季の「30」から「47」へと変えた。通常なら小さい番号にしていくものだが、あえて高校時代に練習試合で着用していた愛着ある大きな番号に変更した。ポジションにも左右されず、「旗手色」に染まったプレーを披露するとの決意表明にも映った。
その無言の公約を、旗手は実現させてきた。その証拠が、川崎以外での評価だ。U-24日本代表として東京五輪を戦い、3試合に先発し、計5試合に出場。大会終盤に入るほど、出場時間を伸ばした。
五輪直後の9月の代表入りはならなかった。10月も川崎やU-24日本代表でともに戦い、ヨーロッパへと海を渡った田中碧の活躍を見る側にとどまっていた。
だが「その時」は来た。J1優勝の翌日、発表された日本代表のメンバーリストに旗手の名はあった。ポジションはDFに分類されていた。今季の働きぶりは、着実に旗手をひとつ上のステージへと導いていたのだ。
その代表発表の数時間前、旗手のもうひとつの転機を予感させるニュースが浮上していた。ヨーロッパのクラブからの招きである。