■スタートは「気付き」

「面白いコーチ」とは山内智裕さんである。1987年鹿児島県出身の34歳。大学卒業後、J2のFC岐阜でセンターバックとして活躍、その後、FC KAGOSHIMA、松江シティFC(当時片山さんが監督をしていた)、高知ユナイテッドSCといった地域リーグのクラブでプレーした後、2019年にアシスタントコーチとしてFC岐阜に戻った。山内さんがリスタートを深く考えるようになったのは、2020年夏、岐阜のコーチ時代だったという。

「セットプレーの攻撃を任されました。当時の岐阜ではセットプレーは基本的に選手まかせで、岐阜には絶対的な精度をもったキッカーがいなかったこともあって、ほとんど得点には結びついていませんでした。そこで『おまえが中心になって考えてみろ』ということになったんです」

「J1や他のチームには、緻密にトリックプレーを練習する監督がいると聞いていたのですが、そういった経験がなく、自分自身でしっかり整理して考えなければなりませんでした」

 山内さんの「リスタート指導」は、選手たちにデータを示すことから始まった。このシーズンのJ3リーグが半分終わった時点で、FC岐阜のCK獲得数は上から3番目だった。リーグ平均が1試合あたり4.9本だったのに対し、岐阜は5.4本という数字が出ていた。しかし得点は92本のCK中4点だけだった(先に示したJ1のデータ=42本で1点=と比較すると、この数字はけっして悪いものではない)。「得点機会を無駄にして、もったいないよね」と、選手たちに気づかせるところからのスタートだった。

(2)へ続く
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