■かつては試合終盤に歌われていた「ユル・ネバ」
言うまでもなく、ジェリー・マーズデンはリバプールFCの大ファンであり、このチームを就任3年で2部から1部に引き上げた「闘将」ビル・シャンクリーの信奉者だった。彼は録音が終わって間もない『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』のテープをシャンクリーに贈った。1部リーグに復帰して2シーズン目を前にした国内遠征のバスの中でこの曲を聴いたシャンクリーは、すっかり魅了された。
このバスには、地元の記者数人が同乗していた。彼らはいっせいに「ジェリー・マーズデンの新しいシングルがリバプールFCの公式ソングとなる」と報じた。後に、シャンクリーはマーズデンにこう語ったと言われている。
「ジェリーよ、我が息子よ。私はおまえにサッカーチームを与え、おまえは私たちに歌をくれた」
1963-64シーズン開始とともに、リバプール・サポーターの間で『ユール・ネバー・ウォーク・アローン』が歌われるようになる。最初は試合の終盤、勝利を確信したサポーターが応援マフラーをかざしながら歌った。この歌声を聞くと、リバプールの選手たちは試合の最後の仕上げに向かって自信と冷静さを取り戻し、なんとか反撃しようとしていた相手チームの選手たちは闘志をくじかれたという。
しかしやがて、サポーターたちは試合前に大合唱するようになった。「ユール・ネバー・ウォーク・アローン(あなたはひとりで歩むのではない)」というメッセージは、試合前にこそ、プレーヤーたちに贈るにふさわしいものだったからだ。厳しい試合になるかもしれない。苦しい時間帯もあるだろう。しかしそれはけっして孤独な戦いなんかじゃない。きみたちには、いつでも僕たちがついている―。
この曲は、さまざまな人が日本語訳をしているが、私も、サッカーのサポーターソングであることを意識して訳してみよう。