■ワールドカップの試合中にゴールが壊れた
「円形ポスト」の良さはすぐに認められ、他のクラブも次々とこのポストを導入していく。スタンダードゴール社はさらに新製品を開発する。楕円形のゴールポストである。今日では、この楕円形のものが主流になっている。ただルール上は、「正方形、長方形、円形、楕円形、またはこれらの組み合わせのいずれか」ということになっている。
さて、ゴールポストが試合中に何らかのアクシデントで壊れた場合にはどうなるのだろう。現行のルールには、「クロスバーがはずれた、または破損した場合」のみが記載されている。それによると、「それが修復されるか元の位置に戻されるまで、プレーは中止される」ことになっている。修復が不可能な場合には、試合は中止となる。
私のチームの練習で都内のグラウンドに行くと、ゴールは当然のことながら野ざらしである。傷ができてサビが広がり、いまにも壊れるのではないかというゴールポストがたくさんある。しかし実際には、ポストが折れたり、バーが落ちたりというケースに出合ったことはない。ただ1回、「ゴールが壊れた」のを見たのは、1994年のワールドカップ・アメリカ大会のことだった。
7月5日にニューヨーク(実際のスタジアム所在地はニュージャージー州)のジャイアンツスタジアムで行われたラウンド16のメキシコ対ブルガリア。その前半20分、ブルガリアの右CKの直後に、突然メキシコのゴールに張ってあったネットが崩れた。ニアポストに走ったブルガリアFWコスタディノフがヘディングで左に流したのを、メキシコのMFベルナルがゴールに戻りながらファーポスト前でヘディングして左CKに逃れたのだが、彼は勢い余ってゴール内まで走り込み、思わずネットをつかむと、ネットを張るためにポストの後ろの角から後方に向かって突き出されていた「支柱」が折れてしまったのだ。