大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第73回「サッカーゴールの白と黒」(1)「一対の値段」は?の画像
ゲームにとって神聖な空間を作り出すポストとバー 撮影/中地拓也
【画像】94年W杯のロベルト・バッジョの決勝シーンほかゴールそれぞれにストーリーがある
地球の外からやって来た生命体に、サッカーの試合についてこう聞かれたらどう答えよう。「その白い四角い枠に囲まれた空間にボールを通すことにはどういう意味があるのですか?」と。だが、われわれもこう思っているのだ。「なんでサッカーゴールは白い長方形の置き物なんだろう」と。さらに、「そこに手を使わずにボールを入れあうゲームは、なんで人類をこんなに熱狂させるんだろう」とも。本稿では、永遠の疑問に限界まで迫った――。

■ビーチサッカーは黄色いゴール

 ロシアで開催されているビーチサッカーのワールドカップで日本が準々決勝進出を決めた。2018年のワールドカップといい、ロシアという国は、日本のサッカーにとって縁起のいい国らしい。

 その初戦、パラグアイに0-3から第3ピリオドに6得点して7-4の大逆転勝利を収めた試合を見ながら、私は少し驚いた。ゴールポストが黄色に塗られていたのである。フットサルとほぼ同じ大きさのピッチで、5対5で行われるビーチサッカー。ゴールの大きさは、サッカーよりひと回り小さい5.5メートル×2.2メートル。といっても、フットサルの3メートル×2メートルよりだいぶ大きい。

 ビーチサッカーのルールを見ると、ゴールの色は単色でなければならないが、「好ましくは蛍光黄色」とされている。白っぽいピッチの砂と明確に区別がつくようにしたのだ。ちなみに、フットサルのゴールは「ピッチの色と異なるものでなくてはならない」ということになっている。ほとんどが白のビーチサッカーのピッチと違い、室内で行われるフットサルのピッチはさまざまな色だからだ。2016年にコロンビアで行われたフットサルのワールドカップでは、青いピッチに赤白の縞模様のゴールが使われていた。

 だが、サッカーではゴールは「白」と決められ、ルール第1条に明確に書かれている。以前はルール本文にはなく、「公式決定事項」に入れられていたが、それでもはっきりと「白でなくてはならない」と書かれていた。サッカーのピッチは基本的には芝生の緑なので、白がいちばんよく目立つ色とされてきたのだろう。

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