■海外から現代表と元代表の日本人と欧州代表クラスがJリーグに
8月13日に締め切られた、今夏のJリーグの移籍市場で一つのトレンドとなったのが、これまで海外クラブで活躍していた日本人選手たちのJリーグ復帰の動きだ。
東京オリンピックにオーバーエイジ枠で参加してサイドを守り、また中央をカバーする素晴らしい守備力を発揮した酒井宏樹は、長くプレーしたフランスのマルセイユを離れて浦和レッズに入団し、8月14日のサガン鳥栖戦では早くもその実力の片鱗を見せた。
古橋を手放した神戸は、代わりに現日本代表の大迫勇也と元日本代表の武藤嘉紀を加入させた。古橋を放出したことのマイナスと、大迫、武藤の加入のプラスを比較すれば、おそらく獲得したものの方が多いだろう。
日本代表クラスの選手が次々と海外移籍していくことは日本代表の強化には間違いなくプラスになるが、それによってJリーグが弱体化、空洞化する危険もある。
大事なのは、育成部門をさらにレベルアップして流出した選手に匹敵する選手を生み出していくことだが、同時に流出していった選手の代わりに、それに匹敵する(あるいはそれを上回る)大物選手を加入させることも大事だ。日本代表クラスが流出するのであれば、世界各国の代表クラスの選手を獲得すればいい。移籍で流出した若手選手以上の選手と契約できれば、Jリーグのレベルが下がることはないのだ。もちろん、それは、酒井宏樹や大迫勇也、武藤嘉紀のような日本人選手でもいいし、アンドレス・イニエスタのような外国籍選手でもいい。
実際、大迫と武藤を獲得した神戸は、ボージャン・クルキッチとの契約にも成功した。かつて、バルセロナで期待の若手と言われた有名選手だ。
その他、J1リーグで最下位に沈む横浜FCは東京オリンピックに出場したUー24ドイツ代表のGKスベンド・ブローダーセンを加入させたし、浦和レッズはFWのキャスパー・ユンカーに続いてDFのアレクサンダー・ショルツと契約した。2人とも、デンマーク代表招集経験がある選手だ。名古屋グランパスにやって来たCFのポーランド人、ヤクブ・シュヴィルツォクもポーランド代表経験のある選手で、どんなポジションからも常にゴールを狙う姿勢を持つ根っからの点取り屋のようだ。
古橋亨梧のセルティックへの移籍では約7億円の移籍金が発生したと伝えられている。
神戸は、もともと資金力のあるクラブだが、夏の移籍で非常に積極的な補強に動けたのは、手元に古橋の移籍によってもたらされた資金があったからなのだろう。
優れた選手を育成して海外に移籍させ、そこで巨額の移籍金を獲得。そして、そこで得た資金を使って育成のための環境を作り、またヨーロッパ各国の代表クラスを加入させる。そうした流れができれば、海外移籍によって若手日本人選手のレベルを引き上げることとJリーグの人気の拡大することを同時に実現できるはずだ。