■民間資金を活用した西日本のスタジアム
ここ数年で、西日本のスタジアム事情は大幅に改善された。
かつては、大阪の2つのクラブ(ガンバとセレッソ)はともに陸上競技場を本拠地にしていた。長居スタジアム(ヤンマースタジアム長居)は2002年ワールドカップを前に全面改修されて近代化されたが、5万人収容であり、セレッソ大阪の集客力を考えれば明らかに大きすぎたし、ガンバ大阪が使用していた万博記念競技場(陸上競技場)はアクセスがちょっと不便な上に施設はかなり老朽化していた(開場は1972年)。
そこで、ガンバ大阪はついに専用スタジアムの建設を決定した。
ガンバ大阪は任意団体「スタジアム建設募金団体」を設立して経済界やサポーターからの寄付金を募ってスタジアムを建設し、完成したスタジアムを吹田市に物納で寄付するという形でスタジアム建設資金を調達して新スタジアムが建設された。いわば、官民合作のスタジアムである。
日本では、これまでの多くのスタジアムは自治体主導で建設されてきたが、ガンバ大阪が建設した市立吹田サッカースタジアム(パナスタ)はそれとは一線を画した、民間主導の新しいスタジアム建設のスキームだった。
同じ関西圏には、これに類似した方式で建設されたスタジアムがすでに存在していた。御崎公園球技場(ノエビアスタジアム神戸)である。
御崎公園には1970年に完成した神戸市立中央球技場が存在していたが、2002年ワールドカップの開催地として立候補した神戸市はこの球技場を改築することを決定。その際に使われたのが「公設民活方式」だった。設計から施行、運営までを一括した事業コンペを行って、スタジアム所有者である神戸市が民間企業に委託したのだ。運営主体である民間企業が設計段階から関わるので無駄を排することができる。
そして、入札の結果、神戸製鋼所と大林組のグループが受注して完成したのが現在のスタジアムなのだ(ワールドカップの時には仮設スタンドを設置。大会後に撤去してダウンサイジングを行った。そして、完成以降は株式会社「神戸ウイングスタジアム」が一貫して運営を行っている)。
他のスタジアムとの大きな違いは、スタンド下がトレーニングジムなどとして利用され、地域住民のために使用されている点である。
2017年に完成した北九州市小倉北区の北九州スタジアム(ミクニワールドスタジアム北九州)も民間資金を活用し、民間に施設整備と運営を委託する方式で建設された(「PFI方式」と呼ばれる)。事業は九電工グループが落札し、設計・建設から運営までを一括で受注。「株式会社ウインドシップ北九州」が設立されて、現在もスタジアムの運営を行っている。
つまり、西日本のサッカー専用スタジアムの多くが、民間資金を活用し、民間に運営を委託する方式で建設されているのだ。