7月21日の東京オリンピック初戦、なでしこジャパンはカナダを相手にあっさりと先制されて、1点リードされたゲームを後半39分に追いつくという、きわどい同点劇を繰り広げた。なでしこジャパンの不調は明らかだ。同じグループでは強豪イギリスにチリが0−2と食い下がって、好調ぶりを見せている。このままでは、グループリーグ突破も危ういかもしれない……。
なでしこジャパンはオリンピックの初戦をカナダと戦い、苦しい内容ながら1−1で引き分けた。前半6分に先制され、後半立ち上がりにはPKのチャンスをつかみながらFW田中美南のキックが相手GKに防がれるというなか、敗色濃厚だった後半39分にMF長谷川唯のロングパスでFW岩渕真奈が抜け出し、GKの出ばなをついて同点ゴールを決めた。
このゴールはなかなか興味深いものだった。カナダのDF陣は体も大きいうえにアジリティーが高く、なでしこジャパンはほとんど一対一で勝つことができなかった。なかでも右のCBを務めるカデイシャ・ブキャナンはスピードがあり、裏へ抜けたと思われたボールにも楽々と反応、反転して自分のものにしていた。その一方で、コンビを組むシェリーナ・ザドルスキーは、強さはあるものの、背後に難があると見られていた。
自陣右タッチライン際からの長谷川のパスは、まさにこのザドルスキーの背後をついた。それまで日本のFWは引いて足元で受けるというプレーを繰り返していた。このプレーに対し、カナダは体を寄せて厳しく当たり、ほとんどの場合、そこで日本の攻撃を途切れさせた。後半39分の長谷川のパスは、この試合でほとんど初めてといっていいほどの「裏」へのパス。ザドルスキーの意表をついた。そして岩渕はそのパスを呼び込むように、長谷川がボールをもって顔を上げた瞬間に走りだしていた。
ザドルスキーは岩渕の走りだしに気づいたが、長谷川がけったボールの判断を誤り、自分でクリアできるかと思ったのだろう、一瞬、岩渕を追うのが遅れた。しかしボールは伸び、岩渕の前に落ちる。小さな岩渕が前に体を入れると、ザドルスキーは自分のスピードを生かせなくなってしまった。