■山形はサッカー用語を具現化する

「連携」とか「連動」といった言葉がある。日本代表森保一監督も、しばしば口にする。選手同士が協調して動く、という意味合いだ。「コンビネーション」に置き換えてもいい。

 連携や連動をしたうえで、相手守備陣を突破するには、「速さ」が伴わなければならない。複数の選手が同じイメージを共有することで、ボールの動きにスピード感が出てくる。

 山形が磐田から奪った2つの得点は、チーム全体としてゴールイメージを重ね合わせた結果だった。開始わずか30秒で奪った先制点は、右サイドバック半田陸の縦パスに右サイドハーフ中原輝が反応し、FW林誠道がグラウンダーのクロスを右足で蹴り込んだ。中原と林がフリーになった裏側には、チームメイトのフリーランニングがある。林のフィニッシュから逆算し、林以外の選手もシュートできる状況を作り出し、電撃的な先制点を奪った。

 37分の2点目も鮮やかな連携から生まれた。右サイドに開いた中原が半田へ落とし、前方のスペースへ飛び出していく。半田が最前線の林へパスをつなぐと、林はワンタッチで落とす。走り込んでいた中原が、得意の左足でインカーブの軌道を描くシュートを蹴り込んだ。

 どちらの得点も、3バックの脇のスペースを有効活用している。戦術的な狙いがハマったわけだが、相手の先をいくランニングも見逃せない。カットインシュートを決めた中原は、相対する選手を振り切ってラストパスを受けているのだ。

 山形が連動したのは、ふたつの得点シーンだけではない。カウンターのシーンでは、5人、6人が敵陣へなだれ込んでいった。

 リードする展開のなかでは、磐田にボールを握られる時間が続いた。53分には1点差に詰め寄られたが、「守備でも強く戦えていた」とクラモフスキー監督が振り返ったように、ハードワークを徹底してクラブタイ記録の6連勝を達成した。順位は前節終了時と同じ6位だが、首位との勝点差を「6」に詰めている。クラモフスキー監督の山形は、J2でいまもっともエキサイティングな戦いをしていると言っていい。中断明けの戦いぶりが、いまから楽しみだ。

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