大住良之の「この世界のコーナーエリアから」連載第67回「過剰なゴールパフォーマンスの愚」(3)変幻自在なネイマールのダンス の画像
ゴールパフォーマンスの「始祖」エウゼビオ(1966年W杯イングランド大会ハンガリー戦のゴール後) 写真:AP/アフロ
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ゴールの喜びは、ピッチに立つチームメートやベンチの仲間、スタジアムやテレビの前のサポーターとともに分かち合うもの。派手なゴールパフォーマンスはスタジアムの華だ。新しいパフォーマンスを思いつき、その練習を重ねても披露するチャンスがないアタッカー。大舞台でゴールを決め、どう喜んでいいのかわからないディフェンダー。どちらも「サッカーあるある」だが、ゴールした選手が喜びを爆発させる様は見ている側も幸せな気持ちになるーー。

■変幻自在なネイマールのダンス

  だが「電話パフォーマンス」になると、わけがわからない。ブラジルのスタジアムには、ときおり、ゴール裏に電話が設置されているところがある。おそらく、報道関係者が必要なときに使うため(携帯電話などないころに)のものだったのだろうが、これを得点した選手が使う(ポーズをする)のである。ゴールをしたら電話のところに走っていく。そして受話器を取り、「ママ、見てくれた?」とでも話しているようなストーリーである。これを最初に見たときには、あきれてものが言えなかった。

 現代のブラジル代表エース、ネイマールは、さまざまなダンスのパフォーマンスをする。ひとりかふたりで踊っているならまだいいが、5人も6人も寄ってきて合わせて踊られたら、相手は「そんな練習までしてきたのか」と、うんざりするに違いない。もちろん、相手チームのサポーターもである。

 得点者だけがやるパフォーマンスは、短時間であればまだ我慢ができるが、「集団パフォーマンス」となるとうんざりする。サンフレッチェ広島の選手たちが一時さまざまなパフォーマンスに凝り、5人も6人も集まって矢を射るポーズをしたり、魚釣りのパフォーマンスをしていたが、相手はどう思っていただろうか。

 デズモンド・モリスが18種類を挙げた時代から30年、ゴールパフォーマンスは信じ難いほど多彩になり、その「進化」はとどまるところを知らない。すべてを紹介することなど、とてもではないが不可能だ。あといくつかのパフォーマンスに触れて、この駄文を終わることにする。

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