■女子スポーツに新時代を告げるゴール
一時流行したのが「シャツ脱ぎパフォーマンス」だ。喜びのあまりシャツを脱ぎ、振り回しながら走るのである。これはルールで「警告」になるとされている。VARなどで最終的に得点が認められなかった場合にも警告である。現行のルールでは、「得点の喜び」で警告を与えられるのは、以下の4つのケースである。
・安全や警備に問題が生じるような方法で、ピッチ外周フェンスによじ登る、または観客に近づく。
・挑発する、嘲笑する、または相手の感情を刺激するように行動する。
・マスクや同様のものを顔や頭に被る。
・シャツを脱ぐ、シャツを頭に被る。
1999年のFIFA女子ワールドカップはアメリカで開催され、決勝戦はロサンゼルス近郊のパサデナにある「ローズボウル」スタジアムで行われた。5年前の男子ワールドカップ決勝と同会場である。観客は9万0185人というとてつもない数だった。アメリカと中国の決勝戦は0-0からPK戦になり、先行の中国の3番手、劉英が失敗し、アメリカは5番手のブランディ・チャステインが決めれば優勝ということになった。
慎重にボールをセットし、左足で力いっぱいのキック。ボールは右に跳んだ中国GK高紅の逆をつき、ゴール中央に突き刺さった。この瞬間、チャステインは白いユニホームを脱ぎ、それを振り回した。スポーツブラ姿になってしまったことなどまったく気にせず、走り込んできたチームメートたちに抱きつかれ、囲まれ、左手を挙げ続ける姿は、女性のスポーツに新時代が到来したことを象徴するものとなった。