■力なくピッチに倒れ込む
倒れた背番号13の周りにすぐに選手が集まるほど事態は深刻で、天野純はベンチに向かってすぐさま交代を要求したほどだ。脳震とうの疑いがあるため、マルチンスを移動させることは避けて試合は中断された。
ベンチも交代の準備に移った。数分して自ら立ち上がったマルチンスは、一度ピッチの外に出る。試合が再開され、コーナーキックへと移ったが、マルチンスは早く戻せ、と言わんばかりにピッチを指さして声を出す。医療スタッフが力づくでピッチから離そうとしたほど、プレーへの執念を見せた。
医療スタッフの前で片足ずつ立って脳震とうの可能性を探り、“無事”が分かるとすぐにピッチに戻ろうとした。しかし、一度ベンチまで戻らされる。すると今度は、自ら片足立ちをして“問題なし”を強くアピール。そこでやっとピッチに戻ることが許されると、猛ダッシュで2度目のコーナーキックの守備ポジションに入った。
スタジアムで悲鳴すら生まれたアクシデントにもかかわらず、闘争心は少しも削がれていない。むしろ、ピッチから出たことで、より気持ちを強くしたかのようだった。この気迫に、チーム全員が気持ちを振るい立たされたはずだ。
指揮官は試合後、「選手の命を第一に考えないといけません」と前置きしたうえで、「あの状況の中、ドクターの確認のもと“やれる”という判断を総合的にし」たことを明かした。ハーフタイムにもあらゆるテストを行ったうえでのフル出場だったという。