■試合終了のホイッスルは「後半63分50秒」
時計のうえでは後半53分01秒に試合再開。だが1分もたたないうちに今度はポドルスキーが前線に出ていた清水のDF立田悠悟に体当たりをくらわし、立田が倒れる。ファウルにはとらなかったが、倒れたままの立田を見て柿沼主審は54分05秒に笛を吹いて試合を止める。すでに3人の交代を送り出している清水。立田は突っ伏したまま、もん絶していたが、交代はできない。そして立田が担架で運び出され、試合再開の笛が吹かれたのは、57分00秒のことだった。
この時点で、1プレーか2プレーで試合は終了のはずだった。ところが10プレーしても20プレーしても試合は終わらない。そして58分過ぎに清水が左CKを得て石毛秀樹がキック、上がってきていた清水GK六反勇治がヘディングシュートを決めたのは、58分30秒のことだった。
「なぜ終わらないのか。なぜ試合が続いているのか……」。神戸の何人かの選手の集中力は完全に切れていた。ゴール後のキックオフを、ウェリントンは直接シュート。ボールはゴールを越えていく。そのゴールキックから、清水が再びロングボールで攻撃をかける。59分41秒、スローインを受けようとした小柄な石毛に、20センチ近く大きなウェリントンがヒジ打ちしながら体当たり、石毛が倒れる。ウェリントンにはこれでイエローカードが出るが、目の前の清水ベンチから彼に激しい非難の言葉が飛ぶと、ウェリントンはその清水ベンチのスタッフか交代選手にくってかかり、すぐに両チームの選手たちが入り乱れての混乱になる。
この混乱の後、ウェリントンには2枚目のイエローカードが出され、退場となる。試合が再開されるのは、時計で後半63分44秒。清水のMF兵働昭弘がけったFKを神戸がはね返すと、柿沼主審はようやく試合終了の笛を吹いた。「後半63分50秒」のことだった。後半のアディショナルタイムは、実に18分50秒となっていた。
後半45分が過ぎてからプレーすべき時間は4分間から4分59秒だった(「アディショナルタイム4分」の表示はそれを示している)。だが実際プレーしたのは7分27秒になってしまった。主審の勘違いだったが、終わるはずの試合がいつまでたっても終わらない状況に置かれた選手たち、無用な醜い混乱を長時間見させられたファンのことを考えると、二度とあってはならないことだった。