■ロドリゲス監督の出した結論
明らかに劣勢となったゲーム……。浦和のリカルド・ロドリゲス監督はテクニカルエリアの中で顎に手をやりながら考え込み続けた。
「戦術家」として定評のあるロドリゲス監督がどのような手を打ってくるかと興味深く見ていると、15分に指示を与えてボランチの2人の位置を左右入れ替えた。スタートは右に柴戸海、左に伊藤敦樹だったのを、右に伊藤、左に柴戸としたのだ。
神戸は右サイド(山口と酒井サイド)が活発だった。つまり、浦和から見ると左サイドを崩されてピンチが続いていたのだ。そこで、より守備能力の高い柴戸を左に置いてとりあえず守備を強化しようとしたのだろうか。
飲水タイムでも、ロドリゲス監督は選手の配置という意味では何も動かなかった。
だが、時計の針が30分に近づく頃から、次第に浦和にチャンスが生まれ始めた。
さすがに神戸も試合開始直後から激しいプレッシャーをかけ続け、また相手ゴール前に走り込むなど動きを繰り返していたため、次第に運動量が減って浦和の選手に対する寄せが甘くなり始めた。それを利して、浦和が早いタイミングで長いパスを前線に送り始めたのだ。
いわゆる選手の配置によるタクティクス(戦術)ではなく、試合のコンセプトを変更したのだ。
我慢するところは我慢して守り切る。センターバックの2人、とくに槙野智章の頑張りによって2失点目を防ぐとともに、相手のプレッシャーが弱まり始めるのを待ってロングボールで攻める。浦和の選手たちにはその意識が徹底されていた。
これだけ試合をコントロールされてしまうと、戦術的に動いて流れを引き戻すことは難しい。それならそれで、劣勢ではありながらもゲームの流れを考えながらプレーし、「結果」を取りに行く……。それが、ロドリゲス監督の「結論」だったのだろう。
「結果」は、何も勝利でなくてもいいだろう。この内容で引き分けなら御の字だ。しかも、同点に追い付くとなれば、それは貴重なアウェーゴールともなる。