■特徴を存分に出して同点弾
ただし、試合の序盤からリズムを握ったのは川崎だった。レアンドロ・ダミアン、家長昭博、三笘薫で構成される強力3トップが鹿島守備陣に襲い掛かり、決定機を与えてしまう。そして19分、日本代表DF山根視来のスルーパスを受けたダミアンに先制点を許してしまったのだ。
とはいえ、川崎が圧倒していたかといえば、決してそうではない。どちらもプレー強度が非常に高く、成績不振から監督交代したチームと、リーグで首位を独走するチームといった、“イメージの差”は皆無だった。ただ、得点した場面では山根とダミアンのプレーが鹿島の想像を超えてきただけだった。実際、川崎にチャンスを作られたものの、最初の45分での失点は最少。試合の展開は分からなかった。
後半に入ると、アタマから選手交代した鹿島がリズムをつかみ、川崎GKチョン・ソンリョンを脅かすようになっていく。攻守での好循環をもたらしたのが、球際の強さと切り替えの速さだ。
たしかにパススピードや細かさでは川崎に分があった。しかし、それ以外ではほぼ互角。その内容に比例して、61分にはFW上田綺世が同点弾を決めてみせた。アシストしたのは荒木遼太郎。荒木は間で受けて、技術とセンスを生かしたスルーパスを披露すれば、上田は得意の裏抜けでループシュート。自分たちの良さをすべて発揮してのゴールで、鹿島の売り出し中の若手が王者の守備を破ったのだ。