■鬼木監督が見せたいつもと違う姿
そんな展開で、鬼木達監督が非常に珍しい場面を見せた。それは、後半飲水タイムのことだ。鬼木監督は試合中に指示を出すときはマスクを外して声を出す。しかし、飲水タイムとなると必ずマスクをして選手に指示を出す。仮にマスクをベンチに置いてしまっているタイミングで飲水タイムとなっても、小走りでベンチまで戻ってマスクをするほど気を遣う指揮官だ。
他のチームの監督に目を向ければ、必ずしも飲水タイムにマスクをするわけではない。たとえば対戦相手の浮嶋敏監督は飲水タイムにマスクをしないで指示を出している。こうした光景は珍しくなく、逆にマスク姿が珍しい監督すらいる。
この試合で、鬼木監督は前半の飲水タイムにはいうも通りマスクをして指示を出した。しかし、後半の飲水タイムにはマスクをしないで指示を出していた。その是非を問いたいのではなく、ルーティンを忘れてしまうほど、鬼木監督は気持ちのうえで前のめりになっていたのだ。
「後半の入りのところ、自分のところでしっかりマネジメントしないといけなかった。もう1回、相手は勢いを出す可能性があった。そこを消さなければならなかった」
「ハーフタイムで(選手を)代えるなら代えるというのも手としてあった。早めに選んで交代したが、その一瞬で点を入れられた」
こう試合後に振り返ったように、交代のタイミングで葛藤があった時間だった。