■清水を窒息させるプレッシング
中2日で迎えた厳しい連戦だが、3列目以降は鹿島戦と同じメンバーが先発した。攻撃陣でも、もはや不可欠な存在となったマテウスの連続先発はもちろん、鹿島戦で前半のうちに投入された柿谷曜一朗も試合開始からピッチに立った。疲労はあるだろうが、言い訳などしないと宣言するかのような戦いぶりを披露した。
まるで、清水を窒息させようとするかのようだった。プレッシングは体裁をなぞるだけのようなものではなく、本気で「狩り」にいっていた。30分のシーンが印象的だ。相手が入れた縦パスに、4人が四方から襲いかかる。清水がわずかな隙間から逃げた先でも、さらに最終ラインから中谷進之介が加わって囲い込み、ボールをむしり取った。
さらに清水を圧迫したのが、前へと進む意識である。相手がGKからつなごうとしたボールに、米本拓司が猛然と詰め寄ったのが17分だった。やはりプレスを連動させてボールを奪ったのだが、その後の切り替えの早さがチャンスにつながった。相手選手同士の狭い間を通して前にボールを送り、最後はガブリエル・シャビエルがミドルシュートでポストを叩いた。シュートも見事ではあったのだが、前へと進む意識、ゴールを狙う意欲が、清水に冷や汗をかかせた。
ややアバウトになろうとも、名古屋は早く前にボールを送ることを徹底していた。その結実が、FKから1点をリードして迎えた50分の場面だ。ハーフウェイライン付近で囲い込んだ相手からこぼれたボールを、右サイドバックの成瀬竣平が1タッチで前線へ送る。とめどなくつながったボールを最後は成瀬がクロスとしたものの弾き返されるのだが、見事だったのはその直後だ。間髪入れずに成瀬が入れたスローインを受けたマテウスは、すかさずゴール前に低く速いクロスを送る。ゴール前にいた仲間が触れることはなかったのだが、このボールが直接ゴールネットを揺らしてリードが広がった。