大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第56回「『代表チーム』との同宿記」(1)日本代表にホテルから追い出された話の画像
2011年、タジキスタン代表と同宿になったドゥシャンベのイスティクロル・ホテル。タジキスタン代表の中核をなす「イスティクロル・ドゥシャンベ」クラブと関係があるらしい。(c)Y.Osumi
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日本代表は手の届かないところに行ってしまって、報道陣は同じホテルに泊まることもできない。しかし、まだまだ敷居の低い代表チームもある。今回は、外国の代表チームと同じホテルに泊まったエピソードの数々を――。

■日本代表にホテルから追い出された話

 1975年に香港で行われたアジアカップ予選の取材で日本代表と同宿になったことは、昨年12月のこの連載(第38回「放浪しない蹴球記」)で書いた。

 日本代表の海外遠征といっても、日本から取材に行ったのは『サッカー・マガジン』から派遣された私と今井恭司カメラマンの2人きり。私たちは選手と同じ香港島の豪華ホテルに泊まり(もちろん費用は『サッカー・マガジン』もちである)、チームバスで練習に通い、選手たちの散歩や買い物につきあったり、ロビーでベテラン選手からコーヒーをごちそうになったりした。

 だがそれは「神話時代」の話である。現在は、報道陣が日本代表と同じホテルに泊まることは固く禁止されている。

 2000年のシドニー五輪のとき、準々決勝の試合が行われたアデレードに行くと、ある女性記者が「ホテルを追い出された」と泣きっ面をしている。どうしたのかと聞くと、大会前に予約してあったホテルが準々決勝を戦う日本代表の宿舎になってしまったため、日本サッカー協会(JFA)の広報から「出ていってくれ」と言われたという。

 彼女は何カ月も前にそのホテルを予約してあり、そこにブラジルに敗れてグループ2位で準々決勝を戦うことになった日本代表がはいってきたのだから、ひどい話だと思ったが、翌日の試合前に会うとニコニコしている。代わりにJFAが用意したホテルが彼女が予約していたホテルより1ランク上で、「部屋にバスローブがあった」とうれしそうに話すのである。

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