■1998年トゥールーズでアルゼンチン代表と

 1998年のワールドカップ・フランス大会では、トゥールーズでの初戦の日、日本の対戦相手であるアルゼンチン代表と同宿になった。試合日の午前中に試合会場に移動し、その晩はその町のホテルに泊まって原稿を書くという形を習慣としている私が午前10時ごろにホテルに到着すると、エントランス前に大型バスが停められ、ロビーがごった返している。そして入り口には警官が何人もいてファンがはいろうとするのを押し返している。

「ホテル難」に苦しめられ続けたこの大会。ようやくこのホテルの予約が取れたのは前日のこと。アルゼンチンは前日から泊まり、試合が終わるとすぐにバスでキャンプ地に帰るのだという。レセプションに向かおうとするところで、アルゼンチン協会会長でFIFA副会長でもあるフリオ・グロンドナ氏とぶつかった。あいさつをすると、彼は大声で「お~い、ここに日本のスパイがいるぞ!」と叫んだ。どっと笑い声が起こった。

 2005年と2008年には、バーレーンのマナマでバーレーン代表と同宿になった。私はバーレーン代表とは妙に縁があり、2004年に中国で開催されたアジアカップのときには、日本との準決勝で惜敗した翌日のバーレーン代表と北京まで同じ飛行機となった。当時20歳そこそこの選手が多かったバーレーン代表は、まるで高校生の修学旅行のようで、トイレでこっそりとタバコを吸っている選手までいた。

 機内にはいると、私の席はバーレーン代表チームに囲まれていた。隣はチームドクターで、落ち着いた人だったが、前後の選手たちは北京に着くまで大騒ぎだった。

※後編につづく

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