■フランクフルトの不調の原因は何なのか
この鎌田の特徴を生かし切れていないことこそが、ここ数試合、フランクフルトが不安定な戦い方しかできていないことの原因の一つである。
たとえば、レヴァークーゼン戦。鎌田が前半のうちに2回チャンスを演出したのだが、その瞬間、鎌田には選択肢が一つしかなかった。6分の場面で右サイドを使ったのは「順」の選択として鎌田自身が選択したパスだったが、33分の場面では、鎌田には右サイドのスペースに走るコスティッチ以外に選択肢はなかったのだ。
鎌田が素晴らしいプレーをして賞賛されたヴォルフスブルク戦では、前でスペースを狙っている選手が必ず複数人いたから、そこで鎌田は予想の難しい意外性のある選択をして、相手DFを混乱させることができた。
鎌田は、そういうパスが出せる選手なのだ。それなら、前線の選手はスペースを狙って走って、鎌田の選択肢を増やしてくれればいいのだが、レヴァークーゼン戦ではヨヴィッチが欠場だったこともあって、前線で走る選手がアンドレ・シウヴァだけになってしまい、またその他のポジションの選手も自分のことしか考えないエゴイスティックなプレーばかりだった。鎌田は自分のドリブルだけで相手を振り切って自ら決めきることはできない。周囲の選手が動いてくれないことには、その特徴を発揮できないのである。
フランクフルトにそういった連動した動きがなくなってしまったことの原因が何なのかは分からない。
激しい順位争いの中での連戦で疲労が蓄積してきたことで、動きのキレが悪くなり、スペースに走り込む動きを90分を通してできなくなってしまったのかもしれない。あるいは、アディ・ヒュッター監督の退任が決まったことによって、チームの約束事が緩んでしまっているのかもしれない。ヒュッター監督は来シーズンはメンヒェングラートバッハの監督となるのだが、よりによってそのことが第29節のメンヒェングラートバッハ戦の前に発表され、そして、メンヒェングラートバッハ戦でフランクフルトは6試合ぶりの負けを喫したのだ。チーム内で不協和音が生まれても不思議はない。
いずれにしても、理由は定かではないがこのところのフランクフルトのパフォーマンスは低下しているが、チャンピオンズリーグ出場という大きなものが懸かっているのだ。最後までしっかり戦い抜いてほしいものだし、そのためには鎌田の良さを引き出す前線での動きの質が求められる。