■大卒ルーキーと19歳が見せたスピリット
試合開始から16分後に、ビッグチャンスがあった。最終ラインからサイドへ展開する神戸のパスが、わずかにズレた。その隙を見逃さず、襲い掛かったのが大卒ルーキーの常本佳吾だった。一気にダッシュして前に出ると、その勢いでボールを叩き、荒木遼太郎に渡す。あとはネットを揺らすだけかと思われたが、ここは距離を詰めてきたGKに弾き出され、決め切ることができなかった。
常本は、前半最後のビッグチャンスにも絡んでいる。43分に、永田勝也のクロスをゴール前で土居聖真が頭で合わせた場面である。
この場面でも、常本の「攻めの気持ち」がにじみ出た。そもそも、右サイドの常本が中央の土居にボールを入れたことからシュートシーンまでつながるのだが、常本はパスを出しただけでは終わらなかった。ドリブルで中央に入りながらボールを出した常本は、そのまま足を止めずにペナルティエリアに侵入し、ゴール左にまで流れていく。2人のDFを引き連れたことでその裏にスペースが生まれ、そこ入り込んだ土居はフリーでヘディングできたのだ。
常本は、61分に退いた。一方で、前述の場面で決め切れなかった荒木はフル出場した。両チームを通じてただ一人、13キロを越える走行距離を叩き出している。まだ高卒2年目の19歳でありながら、その姿には責任感とチームへの献身の強い意識がにじんでいた。