■攻撃で徹底して送った高いボール

 また、このFK自体にも「徹底」が見えていた。高いボールである。

 鳥栖の攻撃はシンプルだ。手数をかけずに縦に送り、酒井の高さで収めるか、中盤の運動量でセカンドボールを回収。そこから、素早く相手ゴールへと迫っていく。決勝点のFKでも、キッカーが選んだのはゴール前に高く上がるボール。こぼれ球をきれいに叩いた酒井のボレーも素晴らしかったが、鳥栖の徹底ぶりもまた、見事だった。開始5分での先制点も、サイドをシンプルに縦に突いたボールを、酒井が1タッチで速いクロスとして中央に蹴り込んだことから生まれていたのだ。

 後半に入ると、名古屋は「個」での打開を模索してきた。まずは、柿谷曜一朗の投入だ。相手選手の間に入り込んでパスを呼び込むことがうまくボールを奪われないため、鳥栖の守備にズレを生み出すことができると踏んだのだろう。

 さらには、後半開始から9分後に投入された相馬勇紀森下龍矢だ。相馬ならば、スピードあるドリブルがある。鳥栖から今季加入して、ついに新天地デビューを果たした森下も、突破力が持ち味だ。こうした武器を得た名古屋は鳥栖の頭上を越して相馬にロングボールを送り、1対1での勝負を促す。マッシモ・フィッカデンティ監督は独力で相手をはがす力に、活路を見いだそうとしたのだろう。

 そのプレーに対して、後半開始からフォーメーションを4-4-2へと変更していた鳥栖は、自陣でもハードワークを続けた。相馬には飯野七聖がつき、厳しいマークで突破を許さない。森下が入り、マテウスもいる名古屋の右サイドに対しては、中野伸哉を当てた。

 結局、クロスのこぼれ球を稲垣祥に得意のボレーで決められたのだが、その後はDFをもう1人投入して、5バック気味にして逃げ切った。ただし、89分にカウンターからシュートを放った交代出場の山下敬大のように、チーム全体がファイティングポーズを取り続けていたことは記しておくべきだろう。そう、キックオフから試合終了のホイッスルが鳴るまで、鳥栖は正々堂々と戦い続けたのだ。

 経営危機が噂され、戦力が流出していった。そんなチームがビッグクラブを倒して、3位へ浮上。単なる番狂わせなどではなく、上位を争う確固たる理由が、鳥栖にはある。

■試合結果

名古屋グランパス 1-2 サガン鳥栖

■得点

6分  林大地(鳥栖)
45分 酒井宣福(鳥栖)
85分 稲垣祥(名古屋)

  1. 1
  2. 2
  3. 3