■選手に良いことをすることによってクラブにもお金が入る仕組み

――なるほど。Jクラブには他にもメリットはありますか?

「たとえばユースからトップ昇格せずに、大学サッカーに進む選手もいますよね。そうなると、クラブは18歳まで育てたという実績は残るけど、そこから先の育成の権利は失います。

 具体的には、その選手が将来海外移籍をしたときに得られる、19歳から21歳の分の連帯貢献金の権利を失います。ただ、トップチームですぐにプレーできない選手でも、うちにレンタル移籍をさせてもらえたら……その選手が別のクラブへステップアップする機会があれば、18歳以降分の連帯貢献金がJクラブの手に入りますし、ステップアップできなかったとしても、ポルトガルで成長はすると思うので、数年後に呼び戻す形で、Jクラブのトップチームで活躍する事が期待できますからね」

――そのような枠組ができれば選手にとっての可能性も広がりますね。

「世界のサッカー界が、そうなっているんですよ。選手たちの進路を作る……選手たちに良いことをすることによって、クラブにもお金が入る仕組みになっているんですよ。選手のことを第一に考えて、行動すればお金が入るルールが作られています」

――なるほど。

「Jリーグのクラブは地域のために勝利を届ける。それがクラブの幸せにもつながります。もちろん選手達も地域に貢献できる事は幸せな事だと思います。だだ、“選手としての幸せはそれだけでよいのか?”という話だと思うんです。“将来はバルセロナレアル・マドリードでプレーしたい”と夢をもった子どもたちの“道”を作る仕事も、日本サッカー界として取り組んでいかなければならないと考えていて。僕らはポルトガルの小さなクラブですが、Uー23のようなリーグに参加する権利や環境があるから、それを上手く活用して欲しいのです」

――日本サッカーがW杯で優勝するために尽力したいという話とそこでつながるわけですね?

「日本サッカーが発展するための仕組みを作りたいんですよ! 昨年のヨーロッパで行なわれた日本代表戦などで顕著でしたが、海外でプレーする40人程度の選手の中から日本代表のコアメンバーが選ばれています。では、ブラジル代表は何人の候補の中から選ばれているのか? ブラジル国外で活躍する何百人という単位では数え切れないほどの候補の中から選ばれているわけですよね。そういう環境を当たり前にすることが日本サッカーの明日につながると思っています」

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