■ベルギーの「高いハードル」は労働ビザ問題

クラブスタッフと話す山形氏(提供写真)

――ベルギーの1部リーグのシント=トロイデンではそれを成し遂げるのは難しかった?

「ベルギーの1部は想像していたよりもレベルが高かったんですよね。東京オリンピック世代の冨安選手は別格としても、活躍できるのはそれよりも上の世代。(2018年に加入した)遠藤航選手や鎌田選手もそうですし、現在活躍している(4月に25歳になる)鈴木優磨選手もそうですよね。それがわかったときに、もう少し若い世代の選手のためには別のカテゴリーが良いかなと思って。それでポルトガルの2部や3部のクラブが頭に浮かびました。僕は当初の想いを断ち切れず、そこから立石さんに相談して、“ポルトガルでやりたいです”と」

――なるほど。そこで円満に退社することになったんですか?

「まずはDMMにきちんと話をしないといけない。そこについては立石さんから説明してもらったうえ、そのあとに(シントトロイデンの会長でDMM.comのCOOを勤める)村中悠介さんなどにも、承諾をもらいにいきました。僕としてはDMMのライバルのような形にするつもりはなかったですし、パートナー的に手を組ませてもらえるチャンスもあれば嬉しいですし、最終的には立石さんからも“日本サッカーのためになるなら”と言ってもらいました」

――ポルトガルのUEFAランキングは高いですが、他にもメリットがあるのでしょうか?

「経営面ですね。下手したら、ベルギーと比較したら、かかる資金が10倍くらい開きがあります。安くできるんですよ」

――というと?

「日本人がヨーロッパのクラブでプレーしようするとき、労働ビザの問題があります。たとえば、オランダでは、20歳以下の日本人がプレーするには約2000万円、21歳を超えると約5000万円の給料が支払われていれば、労働ビザが下ります。ベルギーの場合はもう少し安くて、年俸で8万ユーロが必要で、だいたい日本円で1000万円を超えないとビザが下りません。でも、日本で高校からJリーグに入った選手で1000万円を超えるような年俸をもらう選手って基本的にはほとんどいないですよね。だから、相場よりもはるかに高い給料を用意しないといけない」

――若くてして不相応に高い給料をもらった選手にハングリー精神は求められないですよね。

「それもありますし、ポルトガルは事情が違います」

――というと?

「税金の負担分を合わせて、クラブが1人の選手あたり年間で約1万6000ユーロを用意すれば、労働ビザが下ります。だいたい200万円くらいですね」

――ベルギーだと1人当たりでいくらくらい必要になるのでしょう?

「税金のことを考えると、1人あたり最低でも10万ユーロ以上は用意しないといけないんです」

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