ポルトガル2部リーグに所属するクラブ「UDオリヴェイレンセ」をご存知だろうか? 同クラブの社長を務めるのが、日本人の山形伸之氏だ。先日も、チャンピオンズリーグでポルトガルの雄・FCポルトが、イタリアの名門ユベントスを下してベスト8入りを決めて話題になったように、ポルトガルはUEFAのランキングでは、5大リーグに次ぐ6位に位置している(7位オランダ、8位ロシア、9位ベルギーとつづく)。そんな強豪ひしめくリーグのクラブのすべてを取り仕切る山形氏が、今回、『サッカー批評Web』のインタビューにこたえてくれた(取材/文・ミムラユウスケ)
■山形伸之 やまがた・のぶゆき■ 1970年東京生まれ。2017年、DMMによるシント=トロイデンVVの買収と経営に参画。クラブ買収時には現地に飛び、元オーナーと直接交渉にあたる。2019年12月から日本企業、株式会社ナッツアンドアバウトが買収したポルトガル2部のUDオリヴェイレンセ社長に就任した。
■「死ぬまでにW杯で優勝する日本を見たい」
山形氏には明確な目標がある。
「僕は今、50歳なのですが、死ぬまでにW杯があと何回あるか……。死ぬまでにW杯で優勝する日本を見たい。そのために自分にどのような貢献ができるのかを考えているんです」
山形氏は40代に入ってから、全国でフットサル場を展開したり、サッカーチームのユニフォームを作る会社の社長を4年ほど務めていた。当時から日本サッカーの発展にかかわりたいと考えていた。その頃、ことあるごとにお酒を飲みながらサッカー談義をしていた相手がいる。大学のサッカー部の先輩で、元FC東京のGM、現在はベルギー1部のシント=トロイデンVVでCEOを務める立石敬之氏だ。
シント=トロイデンの日本サッカーへの貢献は説明するまでもないだろう。クラブの“卒業生”を見れば一目瞭然だ。今はドイツのシュツットガルトで戦う遠藤航は、ドイツサッカー界で最も重視されるツバイカンプフ(デュエルのこと)の勝利数でリーグトップに立っているし、フランクフルトの鎌田大地はアシストランキングでトップ争いを繰り広げている。そしてイタリアのボローニャで活躍する22歳の冨安健洋は日本サッカー界の希望の星だ。
立石氏と日本で杯を交わしていた時期に、ことあるごとに山形氏はこう言われていたという。
「日本サッカーの発展のために、ヨーロッパに拠点が必要だと思うんだ」
そんな大きな夢の実現に向け、2017年に山形氏は当時の会社を退職。欧州のサッカークラブ買収をDMMに提案し、その後DMMの一員としてシント=トロイデンと交渉、合意に至った。インタビューは当時の話からスタートした。