■惜しかったオーバーヘッド
「もし、あの試合に負けたり引き分けていたら、僕らは98年W杯出場枠をつかめなかったと思うんだ。だから、僕らはすごく集中していたし、自分達が苦しむであろうプレッシャーの大きさも分かっていた。
韓国がボールを持てばスタンドが盛り上がり、横にいるチームメイトとすら、話せなかった。観衆が叫ぶ、その騒音があまりにも大きくて、チームメイトの言うことが聞こえなかったんだ」
——1点目が決まった後、日本は猛攻をしかけていました。あなたのオーバーヘッドシュートもあって、あのサプライズは、惜しかったですよね。
「あれは良かったよね。僕はいつでもオーバーヘッドをやってみようとしていたんだ。
で、名良橋(晃)はすごくクロスがうまかったけど、あの時は、ボールが通り過ぎてしまいそうだった。あの場面で、僕が唯一、フィニッシュのためにトライ出来た形が、オーバーヘッドだった。
ただ、思うようにボールを捉えられなかったんだ。もう少し上の、足の甲で捉えないといけなかった。でも、ゴールの枠には行った。相手GKが良いセーブをしたけど。
あの状況で、僕が幸せに思ったのは、スタジアム中の反応だよ。韓国側の人は驚異で“オー!”って。で、日本人は“あー、残念、入らなかった!もう!”って。
決まれば良かったんだけど、それでも観客は盛り上がった。オーバーヘッドは難しいからね。すごく良い経験だったよ」