■魅力は「無限の体力」では説明できていない

 山根のプレースタイルについて、“無限の体力”と説明されることが多いが、それは、山根の魅力をわずかも伝えていない。無限の体力があることは、事実だ。2020年シーズンのJリーグが異常な過密日程だった中で、山根は31試合に出場。試合数だけでなく2738分という出場時間は、王者・川崎のピッチに常に立っていたことを示す。なお、この数字は川崎フロンターレのフィールドプレイヤーで最多の出場時間である。

 サイドバックは、現代サッカーにおいて最も運動量の激しいポジションともいわれる。最後尾で守備をし、さらに最後尾からビルドアップに絡み、ボール保持時には最前線まで攻め上がることが求められる。そのポジションで出場した2738分という数字が、どれほど異常かが分かるだろう。“無限の体力”と言いたくなるのも当然だ。

 しかし、川崎というチームは“体力”だけで常に試合に出続けられるチームではない。34戦して26勝5分3敗。Jリーグ史に残るその強烈な数字は、山根が最強チームに不可欠な武器を持っていたことを証明する。では、その武器は何か――攻撃センスと適応力だ。

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