先制点をもたらしたのが最もたくさん走った男である一方、逃げ切りに大きく貢献したのは、この試合で最も多くダッシュを繰り返した男だった。22回のスプリントを記録したマテウスである。

 開幕戦で2得点を挙げたアタッカーは、この日もドリブルで大きく局面を変え、危険性を放っていた。

 だが、マテウスのスプリントは、守備でも十二分にチームに貢献していた。

 神戸は左サイドからの崩しを狙っていた。サイドバックにCBが本職の山川哲史が入った右ではなく、攻撃力がある酒井高徳がいる左を活用しようとしたのだ。

 最終ラインからのサイドチェンジで、酒井が一気に攻め入る場面があった。後半開始から井上潮音が左サイドハーフに入ると、井上が中央へ絞り、中央から山口が左サイドへ張り出して酒井に高い位置を取らせるなど、打開の道を探ってきた。

 その酒井の前に立ちはだかったのが、マテウスだ。57分には、ゴールライン際での1対1で、酒井からボールを奪い切っている。64分にはエリア手前で、またも酒井と勝負。1度は切り返しに尻もちをつかされながらも、すぐさま立ち上がってボールを弾いた。しかも、仲間がボールを拾うや否や、攻撃へと走り出していたのだ。

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