この試合のシティは、リバプールの素早いカウンターの場面であっても、3トップに対して数的優位を保ち続けるように守っていた。帰陣意識を高く持って4-4のブロックでスペースを消して攻撃を遅らせ、ボールが詰まったところで密集して奪いにかかる、という方法だった。今年のリバプールが繰り返し苦しめられているボールを持たされる守備に、シティならではの流動的でありながら人数が変わらないポジショニングが加わった。

 単純に引かれるだけで相手を攻略することができなくなってしまうことが明らかになっている最近のリバプールだが、そんな中でも接戦に持ち込めていたのは、チアゴ・アルカンタラとカーティス・ジョーンズが自身のパスと味方からのパスコースを作るポジショニングの両面で、ボールを動かし続けることを可能にしていたからだ。

 しかし、1-1で迎えた68分、クロップ監督はこの試合最初の交代でその2人を同時に下げた。驚異的な運動量で消耗していた中盤をリフレッシュする意図があったが、力と完成度の両面で上回っている現在のシティに対し、リバプールが拮抗した展開を保っていたのはその2人によるもので、たとえフレッシュな状態でも、ジェームズ・ミルナーとジェルダン・シャキリにそれを続けさせるのは不可能だった。

 この交代で、試合は一変する。中盤でボールを落ち着かせることができなくなったリバプールに対し、シティはプレスを強めた。リバプールのボールは中盤からディフェンスラインに戻されるようになり、パスコースを作る中盤の選手が消えたことで、最終ラインからのボールも前に出せなくなった。

 そうして、襲ってくるプレスに対してゴールキーパーのアリソン・ベッカーまで戻すしかなくなった。そして、最終ラインと同じように、アリソンもまた、戻されてもボールの出しどころがなかった。

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