大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 連載第42回 「黄色と赤色」の画像
東京都サッカー協会のイエローカードとレッドカード。筆者は東京都サッカー協会主催の試合では審判はできず、副審ができるだけの「4級審判員」なので、公式戦では使ったことはない。(c)Y.Osumi
全ての写真を見る

サッカーにお詳しい方や観戦歴の長い方ほど、当連載をお愉しみいただけているようである。それもそのはず、ここ数回のテーマを振り返っても、ラジオ実況中継放送、脛当て、タンカ(担架)と、ディープにサッカーと切り結んでいる方でなければ、関わることのないものばかり。でも今回は、日常生活でも使えます。

■さまざまな競技がカードを採用

 カードの時代である。

 クレジットカード、スイカ、マイナンバーカード、保険証、会員証、診察券、各種のポイントカード……。少し気を抜くと、財布はさまざまなカード類でふくれ上がってしまう。わが物顔のカードたちの間で、わずか数枚しかない紙幣たちは心細そうな顔をし、とても肩身の狭い思いをしているように見える。

 だがもちろん、この連載は、一応はサッカーがテーマだから、こんなカード類の話ではない。そう、イエローカードとレッドカードの話である。「言葉が通じなくても、主審から下される処分の意味がわかる」――。まさに「ユニバーサル・スポーツ」サッカーならではの発想ではないか。いまではさまざまなスポーツだけでなく、一般用語としても頻繁に使われる。「お父さん、そんなに飲みすぎるとイエローカードよ!」「お母さんのその下腹は、レッドカードだ!」てな具合である。

 野球やアメリカン・フットボールなど、「アメリカ系」のスポーツでは採用されていないようだが、「欧州系」のスポーツではサッカーにならってイエローカードとレッドカードを使っている競技が多い。陸上競技(トラック競技や競歩)、オージーボール、バドミントン、バンディ(私たちがアジア大会で初めて知ったインド生まれの競技「カバディ」ではない。サッカー場のような広い氷のリンクで小さなボールを使って行うホッケーである)、カヌーポロ、馬術競技、フェンシング、フィールドホッケー、ゲーリック(アイルランドのフットボール)、ゴルフ、ハンドボール、K1格闘技、ラグビー、軟式テニス、バレーボール、水球、卓球……。

 バレーボールには、イエローカードとレッドカードを2枚とも片手にもって示すとそのセットのみ退場、両手に1枚ずつもって示すとその試合からの退場になるというルールがあるらしい。室内で、狭いコートでの競技なので、こうしたマジックのような「カード・テクニック」を使いこなすことができるのだろう。

PHOTO GALLERY 全ての写真を見る
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7