サッカーにお詳しい方や観戦歴の長い方ほど、当連載をお愉しみいただけているようである。それもそのはず、ここ数回のテーマを振り返っても、ラジオ実況中継放送、脛当て、タンカ(担架)と、ディープにサッカーと切り結んでいる方でなければ、関わることのないものばかり。でも今回は、日常生活でも使えます。
■さまざまな競技がカードを採用
カードの時代である。
クレジットカード、スイカ、マイナンバーカード、保険証、会員証、診察券、各種のポイントカード……。少し気を抜くと、財布はさまざまなカード類でふくれ上がってしまう。わが物顔のカードたちの間で、わずか数枚しかない紙幣たちは心細そうな顔をし、とても肩身の狭い思いをしているように見える。
だがもちろん、この連載は、一応はサッカーがテーマだから、こんなカード類の話ではない。そう、イエローカードとレッドカードの話である。「言葉が通じなくても、主審から下される処分の意味がわかる」――。まさに「ユニバーサル・スポーツ」サッカーならではの発想ではないか。いまではさまざまなスポーツだけでなく、一般用語としても頻繁に使われる。「お父さん、そんなに飲みすぎるとイエローカードよ!」「お母さんのその下腹は、レッドカードだ!」てな具合である。
野球やアメリカン・フットボールなど、「アメリカ系」のスポーツでは採用されていないようだが、「欧州系」のスポーツではサッカーにならってイエローカードとレッドカードを使っている競技が多い。陸上競技(トラック競技や競歩)、オージーボール、バドミントン、バンディ(私たちがアジア大会で初めて知ったインド生まれの競技「カバディ」ではない。サッカー場のような広い氷のリンクで小さなボールを使って行うホッケーである)、カヌーポロ、馬術競技、フェンシング、フィールドホッケー、ゲーリック(アイルランドのフットボール)、ゴルフ、ハンドボール、K1格闘技、ラグビー、軟式テニス、バレーボール、水球、卓球……。
バレーボールには、イエローカードとレッドカードを2枚とも片手にもって示すとそのセットのみ退場、両手に1枚ずつもって示すとその試合からの退場になるというルールがあるらしい。室内で、狭いコートでの競技なので、こうしたマジックのような「カード・テクニック」を使いこなすことができるのだろう。