■動画の“割合”にも気を配る
Bリーグ、川崎ブレイブサンダースはオンライン戦略で大きな成功を収めている。特にYouTubeの成功は目覚ましく、チャンネル登録者数で見ると、観客動員数で4倍以上のJリーグチームを凌ぎ、その数はトップの横浜F・マリノス、2位のヴィッセル神戸に次ぐ数字で、常勝軍団・鹿島アントラーズを上回るのだ。
川崎ブレイブサンダース事業戦略マーケティング部部長の藤掛直人氏が進めるYouTube事業の成功の秘訣。「企画、編集、撮影を自前でやるようにした」「クラブの財産である選手が積極的に参加する」そして特に重要な「YouTubeの文脈にあわせる」――。
彼らが学び、実践していったYouTubeの“作法”。
以下に、いくつかの例を挙げる。
チャンネルのなかではすべての選手がニックネームで呼ばれている。例えば、キャプテンの篠山竜青は「りゅうせい」で、辻直人は「じーつー」といった具合だ。
動画のタイトルは川崎ブレイブサンダースやバスケに興味のない人に「ちょっと見てみよう」と思わせるものにした。例えば、『プロバスケ選手が○○をしたらどうなるか』とか『プロバスケ選手だったから、△△できるのか』といったものだ。
映画で言うところのポスターにあたるサムネイル画像にもこだわった。動画の1シーンから選ぶのではなく、興味を持ってもらえるようなインパクトのある写真をわざわざ別個に撮影したものをサムネイルに設定するケースが大半だ(数少ない例外が「プロバスケ選手はどれくらい後ろからシュートが決まるのか検証した結果……」という動画。これは撮影中に “奇跡”が起こったからであり、それは断トツ最多の再生回数に表れている)。
また、サッカーに限らず、スポーツクラブのYouTubeチャンネルではプレー動画などがアップされがちだが、これも排除した。試合のハイライト動画であればツイッターにはめ込むか、別個に作った「プレー動画倉庫」というサブチャンネルの方にアップすることにしたのだ。
そのうえで、メインチャンネル動画の『割合』に心を配った。
例えば、YouTubeの世界で受けるタイプとは異なる、チームの練習場から試合日のロッカールームにまで密着した、硬派なドキュメンタリー映像も1~2か月に1回の頻度でアップしている。
それでも、アップするペースはドキュメンタリー動画が“2”に対して、YouTubeに特化したいわゆる“おもしろ動画”が“8”の割合だ。
YouTubeの文脈にあった動画は新規のファン獲得を、ドキュメンタリー映像は既存のファンの満足度向上を、最大の目標にしている。