1月25日、英国の有力メディア『アスレティック』や『テレグラフ』などが、チェルシーのフランク・ランパード監督が解任される、と一斉に報じた。後任は、12月24日にクラブ首脳と対立したことで解任された、前パリ・サンジェルマン監督のトーマス・トゥヘルになる、という具体的な情報も出てしまった。去就が注目されるランパードの軌跡とはーー。
復権に向けて、そのクラブのアイデンティティーを知る者が必要だった。
2018-19シーズン、チェルシーはチャンピオンズリーグに出場しなかった。ヨーロッパリーグで優勝して、プレミアリーグでは3位でフィニッシュした。だが、シーズン終了後にエデン・アザールがレアル・マドリーに移籍。加えて、クラブにはFIFAから夏の移籍市場での補強禁止処分が言い渡されていた。
チェルシーがフランク・ランパード監督の招聘を決めたのは、そんな2019年夏だった。
■待望の到着
「クラブのDNAを持つ男」の到着は待望だった。それはバルセロナがジョゼップ・グアルディオラに、レアル・マドリーがジネディーヌ・ジダンに賭けたのと似た理屈だ。
だがランパード監督にとっては厳しい状況だった。先述したようにアザールの退団と補強禁止処分があった。そして、プレミアリーグでは2017-18シーズンにマンチェスター・シティが勝ち点100に到達して優勝を飾ってから、何かが壊れていた。
ランパード監督は状況を逆手に取った。メイソン・マウント、タミー・アブラハム、リーチ・ジェームスといった若手選手を積極起用。自身の哲学に合う選手を我慢強く育てていった。
また、「練習に遅刻してはならない」「ミーティング中に携帯を鳴らしてはならない」等の12ルールを選定した。違反者には罰金を課して、ビッグクラブで規律を植え付けようとした。
今季のプレミアリーグ第3節、ウェスト・ブロムウィッチ対チェルシーの一戦、交代でピッチを後にしたマルコス・アロンソが、先にシャワーを浴びてバスに乗り込んだ。これに立腹したランパードはチームメートの前でM・アロンソを叱ったという。それ以降、M・アロンソはプレミアリーグで出場していない。