■あの写真はバーリー撮影ではなかった

 ありがた過ぎる申し出に応えられなかったのは、やはり、あの雑誌を見つけることができなかったからだ。あの雑誌がなければ、私のこの物語は完結しない。

 その雑誌がひょっこり出てきたのは、昨年12月に事務所の引っ越しを決意したときだったどこに引っ越すにしても、鉄筋コンクリートのビルの一室なのに大家が「床が抜けるのではないか」と本気で心配した大量の本や雑誌、紙の資料を整理し、その多くを処分しなければならない。その作業のなかで、大事にファイルに入れてしまわれていたあの雑誌を発見したのだ。

 そして私は思いがけないことに気づいた。私が1970年に入手した雑誌にあったペレとムーアの写真は、その後世界的に有名になったジョン・バーリー撮影のものとは違ったものだったのだ。同じシーンなのだが、微妙に角度が違う。『ミラー』と同じ英国の新聞である『エクスプレス』紙のカメラマンが、同じシーンを撮影していたのだ。この点では、私が心のなかで口汚くののしったアイアンガット社のアンソニー君の見方が正しかったことになる。

 その後の世界ではジョン・バーリーが撮影した1枚だけが空高く舞い上がったのだが、なぜ2枚の写真のその後に大きな違いが出たのか、それはわからない。もしかしたら、『ミラー』のほうが商売上手で、写真を外に出すシステムがうまくできていたためかもしれない。事実、この写真はその後『シュート』誌に権利が移され(バーリーの著作権は無視して)、アンソニー君は初掲載が1970年の『シュート』だと思い込んでいる。

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