そして、こうしたパスワークに加えて前線にドリブラーを用意した。それが、MF長谷川竜也、MF齋藤学、MF三笘薫、FW旗手怜央だ。ドリブルで一人かわせばチャンスの度合いが一気に大きくなることはもちろんだが、それが、パスワークをさらに生かすことにもなる。ドリブラーの突破を防ぐために、相手チームは複数人の選手がチェックするからだ。そこでできたスペース、あるいは、相手選手同士の間隔が開いたことを利用して、パスをつなぐ。
また、カウンター以外の場面でスピードを用いることは極めて少ないのも特徴だ。MF三笘が圧倒的なスキルを活かした単騎駆けでスタジアムを沸かせる場面はあったが、それ以外では前述したように人を密集させてパスをつなぐことに強みを持っているため、スピードに乗った単騎駆けは本来は相性が良くないのだ。
1試合当たりのチーム別スプリント回数でも、川崎はJ1の18チーム中16位の153回。トップのFC東京の186回とは大きな差がつき、全チーム平均である163回よりも低い。
人を密集させたパスと、使う場面を見極めたドリブルを生かして次々と白星を重ねていったが、実は徐々に対戦相手に“川崎対策”を施されつつある。
川崎は今季、4度だけ負けているが、特に、ルヴァンカップ準決勝・FC東京戦とJ1第26節・札幌戦で施された“川崎対策”は、まさにそのど真ん中を行くものだったのである。