こうした戦い方は実際、Jリーグが開示するチーム別の平均走行距離にも表れている。大分戦前の段階で、川崎の1試合当たりの平均走行距離は109.578キロで、なんとJ1全チームで最下位。トップの横浜Mとは1試合で11キロ以上も差がついているから、一人当たりにすれは1試合で1キロも少ないことになる。横浜のサッカーが人もボールも動くサッカーであるのに対し、川崎のサッカーは「人が動かずボールが動くサッカー」ということになる。

 そして、相手ペナルティエリアの近くでは、より得点に直結するパスワークを見せる。特に家長昭博がボールを持ったときは、そのパスの正確性や創造性を生かすべく複数人が連動して動き、ニアとファーで複数の受け手を作り出す場面が何度もみられた。自分が受け手でなくても、他の受け手に時間とスペースを与えるために走る姿が川崎の選手には見られた。

 一方で、単純なクロスを入れることはあまりないのも特徴で、また、相手陣内でフリーキックを得たとしてもすぐにショートパスでリスタートを始めるのもこのチームならでは。他のチームであればゴール前に長身選手を配置してボールを入れる場面でも、このチームはすぐにパスでつなごうとする。

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